野球のとらえ方

以前,2月に4回に分けて「野球のとらえ方」について投稿しましたが,一つにまとめて常設メニューに加えましたので,よかったら御覧ください。

野球のとらえ方①

私たち日本人に非常に親しまれている「野球」ですが,当然なことなのですが,それだけにその人独自の野球の見方や野球感がそれぞれあります。「国民総監督」なんて言われるくらい身近で,みんなに愛されている「野球」ですが,ここで「野球のとらえ方」について私なりに,何回かに分けて整理してみたいと思います。少し固苦しい話になるかもしれませんが,よろしければ,しばしおつきあいいただけると幸いです。

まずは,野球をスポーツという観点から考えてみたいと思います。野球は,スポーツの一つです。では,当たり前のように我々が普通に使っている「スポーツ」の定義は,どのようになっているのでしょうか。「スポーツ」はスポーツ基本法(日本で唯一のスポーツに関する法律)において,定義されています。そこでは「スポーツは,心身の健全な発達,健康及び体力の保持増進,精神的な充足感の獲得,自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動」とされています。また、スポーツは「今日,国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠のものとなっている。」とされています。さらに「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは,全ての人々の権利」との記載もあり,「スポーツ権」が明示されました。(※参考:JSPO日本スポーツ協会HP)

スポーツは競技・余暇活動・体力増強のために行う身体活動の全般を指します。散歩やラジオ体操,ハイキングにランニング,ウェイトトレーニングのように他者と競わない運動もスポーツです。他に,試合会場に足を運んで観戦することや,テレビ放送を見ること,指導者や関係者として選手をささえること,ボランティアとして運営を手伝うことなどもスポーツとされています。これらからわかるように,国は,さまざまな形ですべての人々がスポーツに関わっていくことを推奨しています。(※参考:JSPO日本スポーツ協会HP)

また,2011年には日本スポーツ協会(JSPO)と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で起草,宣言した,「スポーツ宣言日本〜二十一世紀におけるスポーツの使命〜」のなかで,スポーツについて以下のように定義しています。

「スポーツは,自発的な運動の楽しみを基調とする人類共通の文化である」。この大きな特徴は「~のためにスポーツを」という扱いをしていないことです。つまり,「何かのためにスポーツをする,みる,ささえる」のではなく,純粋に「スポーツをする,みる,ささえる」こと自体を楽しむ,喜ぶ,大事にする,という点です。その上で,スポーツの意義と価値について,「スポーツのこの文化的特性が十分に尊重されるとき,個人的にも社会的にもその豊かな意義と価値を望むことができる。とりわけ,現代社会におけるスポーツは,暮らしの中の楽しみとして,青少年の教育として,人々の交流を促し健康を維持増進するものとして,更には生きがいとして,多くの人々に親しまれている。」としています。(※参考:JSPO日本スポーツ協会HP)

スポーツの定義についていろいろ書いてきましたが,これらを受けて「野球」や「広瀬スポーツ少年団」にあてはめて考えてみると,どんな感じになるでのしょうか。私なりに考えると,以下のようなりました…

「子供たちや保護者,指導者,その他関係者など,広瀬スポーツ少年団に関わる全ての人々が,それぞれの立場で純粋に野球を楽しみ,お互いに交流しながら健康を維持増進したり,子供たちの健全育成に努めたり,人生の生きがいを見い出したりしていく。」って,こんな感じですかね…😅

野球はスポーツの一つですから,このような「野球のとらえ方」がまずは全てのベースになっていくのではないかと思います。

次回は,野球を競技として見たときに,どんな「野球のとらえ方」になるのか…考えていきたいと思います。

野球のとらえ方②

第1回目の前回はスポーツとしての「野球のとらえ方」について書きました。この考えは,全てのベースの考え方になると思います。

今回は,前回を踏まえた上で,野球を「競技という視点」からの「野球のとらえ方」について考えてみたいと思います。

「競技としての野球」と言ったときに,一番最初に思い浮かぶのはおそらく「試合」なのではないかと思います。この「試合」は,当然ながらルールに基づいて行われます。そのルールは,プロ野球コミッショナー事務局内に置かれている日本野球規則委員会で定められ,毎年「公認野球規則(オフィシャルベースボールルール)」としてまとめられ,国内の野球は基本的にこれに従って行われます(ローカルルールもありますが…)。

その公認野球規則の冒頭には,「試合の目的」という項目があるのですが,そこには,「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的とする。」と記載されています。つまり,競技としての「野球の目的」は「相手チームに勝つことにある」ということになります。ですから,試合における全ての行動は,試合に勝つための行動になります。例えば,ピッチャーはバッターをアウトに取れるように投げます。また,バッターは,アウトにならないように(ヒットやホームランを打てるように),あるいはアウトになっても少しでも勝ちに近づけるバッティングをしようとします。守備ではアウトが取れるようにゴロやフライを捕ったり,スローイングをしたりします。走塁ではセーフになるように,あるいは一つでも次の塁に進めるように(ホームに近づけるように)走ります。ベンチからの作戦やアドバイスも,どうしたら自分のチームが勝利に近づけるかという観点で出されます。攻撃では1点でも多く取ろうとし,守備ではできるだけ少ない点に抑えようとします。このように,試合における全ての行動は,試合に勝つための行動になっています。

以上のことから,競技として野球を見たときの「野球のとらえ方」は,「試合で相手チームに勝つ」ということになるかと思います。

では,競技として野球を見たときに,試合の目的は相手チームに勝つことになりますが,現実としてその目的は達成されるのでしょうか❓相手チームも同じ目的で自分のチームに勝とうとしてきます。同じくらいの力であれば,単純に考えると勝つ確率はおよそ二分の一です。裏を返せば半分は負けるのです。勝ったチームは目的が達成されますが,負けたチームは達成できません。目的が達成できなかったチームは,残念に思うでしょうし,悔しい思いをするでしょう。

そんな半分の確率で目的が達成できなくてつらい思いをする,競技としての野球に本当にやる意味はあるのでしょうか❓

これについては,次回,考えてみたいと思います。

野球のとらえ方③

競技としての野球の目的は,「試合で相手チームに勝つこと」であることは前回書きました。ここで,ある疑問が出てきました。それは,試合をやればどちらかは負けるので,負けたチームは目的が達成できないし,悔しい思いもするので,野球をやる意味がないのではないか…ということです。

今回は、このことについて考えていきましょう。

結論から言うと,「絶対にそんなことはない」ということです。試合に負けて目的が達成できなくても,勝つことを目指して自分にできることを精一杯やろうとした,そのこと自体に価値があり,そこに大きな意味があると私は思います。このことは,心身の成長期である少年野球では特に大切にしていかなければならないことだと思っています。ですから私は負けた試合後のミーティングでは,試合の中でできたこと,良かったことをみんなで探すことに時間をかけて,そこを大きく評価しています。逆に,できることを全力でやらなかったり,はじめから諦めている気持ちが態度や様子に表れていたプレーには,たとえ試合に勝ったとしても反省を促します。このようにして、試合に勝つことは目的だけれど,勝ち負けよりも,自分にできることを試合の中で精一杯やったかどうかがさらに大切であることをチームの中で共有していきます。これを,試合をするたびに繰り返していくことで,一人一人がプレーに自信を持つとともに,自分に足りないことを自覚していき練習に取り組む姿勢が変わっていきます。

また,試合に勝つことが競技としての野球の目的だからといって,その部分にばかり力を入れすぎ,いわゆる「勝利至上主義」に走ってしまうと,少年野球に望ましい楽しく伸び伸びとやる野球からはずれたり,能力のある子に過度の負担を強いることになったりと,大人主導のギスギスした野球になってしまうことが,今大きな問題として様々な方面から言われています。体罰はもちろん、罵声の禁止についても近年厳しく言われていますが,体罰・罵声などは勝利至上主義の弊害なのではないでしょうか。勝ちたいのは指導者として当然ですが,この気持ちが強すぎ,視野が狭くなると,体罰や罵声に結び付きやすいのではないでしょうか。罵声を浴びせても,その時の指導者の想いを一方的に言っているだけで,子供たちには伝わらず、かえって子供たちの心は離れていくばかりです。私事で恐縮ですが,教員として若い頃は私も大きな声でよく怒鳴って指導していましたが,このやり方では今の子供たちはついて来ない,ついて来られないとつくづく感じています。では,今どんなことに気を付けて子供たちを日々指導しているかというと,少し忍耐力がいるのですが,言いたいことをぐっとこらえて,逆に子供たちの話をよく聞き,気持ちに寄り添ったり共感したりするようにしています。そうすることで,子供たちの方から次第に心を開いてきます。こうなると,こちらが言いたかったことも聞き入れてくれるようになります。少し遠回りですが,この方がかえって近道だということが近年の教育実践から得られたことです。(とは言っても,ダラダラしていたり,やるべきことをやらなかったりした時には,指導者として“喝”を入れる必要はあるかと思いますが…)

少し本題からそれてしまいましたが,このことは大事なことなので,「子供たちに寄り添うこと」については,後日改めてまた書きたいと思います。

長くなってしまいましたが,以上のことから,競技としての「野球のとらえ方」をもう一度私なりに整理して考えてみると以下のようになりました。

「相手チームに勝つことに試合の目的はあるので,勝ちを目指すことは大事である。しかしそれ以上に,試合の中で自分にできることを精一杯やることに本当の価値がある」…って,こんな感じですかねぇ😅

野球って難しい…って思わないでくださいね。スポーツとして野球を楽しむこと,競技として勝ちを目指すこと。この一見相反する二つのことを,どのように両立させていくか…次回はそのあたりについて考えていきます🙇

野球のとらえ方④

スポーツとして野球を楽しむこと,競技として勝ちを目指すこと。この一見相反する二つのことを,どのように両立させていくか…今回はその辺について考えてみたいと思います🙇

キーワードは「少年野球」「バランス」ではないかと思います👍

まず,私が指導している野球は「少年野球」だということを私自身しっかりと意識しておく必要があります。それは,子供たちの体が成長中の発展途上期にあるということです。簡単に言うと,「体が完成しておらず,まだまだ弱く故障しやすいので,無理はできない。」のです。この時期の子供たちの特徴を一番端的に表している言葉が「骨端線」だと私は思います。骨端線とは,レントゲン写真を撮ったときに手や足などに写る線です。これは,そこで骨がさかんに成長しているところで軟骨細胞でできています。20歳ころにはこの線は消え,軟骨細胞はしっかりとした骨の細胞に置き換わります。軟骨細胞なので当然柔らかく,強度な負荷をかけると損傷しやすいところです。子供たちの手を触ってみると,関節が柔らかくてぷにゅぷにゅしているかと思いますが,そこが軟骨細胞だそうです。この軟骨細胞が骨に変わり,骨端線が消えるまでは子供たちに大きな負荷がかかる運動は控えた方がよいと言われています。負荷が大きくかかる箇所として少年野球で一番指摘されているのが,投球する方の肘や肩です。投げ方にもよりますが,投球することで大なり小なり負荷がかかります。ここに過度の負荷がかかるといわゆる「野球肘」などになってしまい,将来的にも後遺症が残ったり,その後のパフォーマンスに大きな影響が出る可能性があります。このような状態にならないように指導者はうまくコントロールしなければなりません。最近はピッチャーの投球数に制限を設けるケースも多くなってきましたが,まだまだ指導者にまかせられているのが現状です。いろいろな考え方はあるかと思いますが,私は全力で投げる投球数は,小学生では1日50~60球程度を目安にしています。(痛めるときは,1球投げただけでも痛める場合もあるそうなので,とても難しいのですが…)

ということで,「少年野球」ではこうした子供の体の特徴をよく理解して試合や練習をすることが大切だと思います。ですから,「試合の目的は相手チームに勝つことである」のですが,「少年野球」では,子供たちの体の成長に配慮して試合や練習を行い,勝つことよりも子供たちの体のことを優先にしなければならない場合があることを,肝に銘じていきたいと思います。一生を通して野球を楽しむという,子供たちの将来を守るために…

もうひとつのキーワードが「バランス」です。「試合の目的が相手チームに勝つこと」である限り,チームを強くしたいと思うのはどの指導者も同じだと思います。そのためには,普段の練習が大切になります。練習のやり方にもよりますが,やればやるだけそれなりに成果が出てくるものです。ですからたくさん時間をかけて練習の量を増やしたくなるのですが,やりすぎて故障してしまっては元も子もありません。成長期である子供たちの体を考えて,練習の質と量も「バランス」よく行うことが大事だと思います。

また,子供たちへの野球の指導についてですが,「言い過ぎ」ても「言わなさ過ぎ」てもいろいろ不都合が出てくるのではないでしょうか。例えば,常に言い過ぎていれば子供たちが受け身の姿勢になりやすく,自主性が育ちにくくなります。逆に言わなさ過ぎて見守るだけでは,子供たちが我流に陥り,投球や打撃などの基本的な動きを身に付けにくくなります。このように指導面でもやはりちょうどよい「バランス」が大事なのではないかと思います。

今回もいろいろ長々と書いてしまいましたが,強引にまとめるとこんな感じですかねぇ~

少年野球では,みんなで楽しみながら勝ちを目指せれば最高ですね~😍そして,子供たちの成長に伴う体の特徴を十分に踏まえて,心身共にバランスの取れた指導を心掛けていきたいと思います‼️‼️

Posted by S監督